- 日本や中国ではゲームとアニメ(コミック)のコラボが多い。
- そんな中、プレイヤー数世界一のLoLは(自社のArcaneを除く)アニメとのコラボはなく、K-POPとのコラボに積極的だった。
- しかし、大成功を収めたK-POPコラボ「K/DA」に参加していた韓国ガールズグループのメンバーに問題が発生。
- LoLとK-POPの蜜月関係はこのまま終わってしまうのか…。
『2023 League of Legends World
Championship』では、決勝大会のオープニングセレモニーでNewJeansが大会テーマ曲の「GODS」を披露しました。
このコラボも非常に好評でしたので、次回2024年の10月か11月に開催予定の
World Championship以降もK-POPコラボの流れはつづくとおもわれます。
前回の記事内ですこし触れた『aespa』ですが、Wild Rift SEA
チャンピオンシップグランドファイナル2021でパフォーマンスを披露した楽曲「Next Level」で
Nimble Neuronの『Eternal Return』ともコラボしています。
今回は、このaespaとともに所属事務所の『SM』に焦点を当てたお話となります。
aespaは韓国出身のカリナとウィンター、日本出身のジゼル、中国出身のニンニンの4人で構成されたグループで、まだデビューから1年も満たない新人のころ、Next Levelが主要チャートでBTSのButterを抜いて1位に躍り出ました。
aespaはBTSに続き、国連集会に招かれて演説をした二組目のグループでもあります。
aespaは楽曲、パフォーマンス、スキル、ビジュアルなどK-POPアイドルとして非常に優れているのですが、複雑で難解なコンセプトが設定されているのも特徴のひとつです。
グループ名“aespa”は、「Avatar × Experience」を表した“æ”と、両面という意味の英語“aspect”を組み合わせたもので、「自分のもう一つの自我であるアバターと出会い、新しい世界を体験する」という意味が込められている。
もうこの段階で「おや?」となりますが、さらに畳み掛けてきます。
メンバーには仮想世界「FLAT(フラット)」において、インターネット上の自分を象った「もう一人の自分」であるアバター「æ(アイ)」が存在している。メンバーとæは「SYNK(シンク)」を通じてお互いをリンクすることができる他、「P.O.S」と呼ばれるシンクホールに通うことで、現実世界と仮想世界を行き来する「REKALL(リコール)」を行うことができる。
独特の世界観に圧倒されて「お、おう…」ってなりますが、ここへさらに「naevis」という謎のキャラクターや「KWANGYA」という謎の場所が出てきて、K-POPファンはさらに混乱させられます。
そのコンセプトを最初に聞いたときは「ちょっとなにをいっているかわからない」ってなりますよね、そりゃ。
まるで「パルスのファルシのルシがパージでコクーン」のような状態で、K-POPファンからも度々いじられてネットミーム化しました。
しかし、この独特のコンセプトこそがゲームとの親和性を高めます。
たとえば、aespaの「aenergy」という曲につぎのような歌詞があります。
카리나 rocket puncher(カリナはロケットパンチャー)カリナはロケットパンチを出現させて強力な攻撃を繰り出せます。
윈터 armamenter(ウィンターはアーマメンター)ウィンターは自在に銃器や刀剣を出現させて武装できます。
지젤 got xenoglossy(ジゼルはゼノグロシーを得た)ジゼルはゼノグロシー(真性異言)を会得し、学んだことのない外国語もしくは意味不明の複雑な言語を操ることができます。
닝닝 e.d hacker(ニンニンはイーディー ハッカー)ニンニンには天才的なハッキング能力が備わっていて、仮想世界を改変できます。
日本人メンバーのジゼル(内永枝利/うちながえり)は日本語、韓国語、英語などが堪能なマルチリンガルなので、この特殊能力が設定されたところまではわかります。
しかしなぜか「光のフレーム」を自在に操って敵の動きを封じます。
SM Culture Universeの「aespa ep.3 Girls (Don’t you know I’m a
Savage?)」でも光のフレームを繰り出して敵の動きを封じます。
(なんそれ)
光のフレームが気になって仕方がないaespaですが、Smilegateの『エピックセブン』とのコラボでは独自のコンセプトがそのまま活かされています。
そしてやはりジゼルはゲーム内でも「光のフレーム」で攻撃してます。
単に見た目を模したスキンなどのコラボにとどまらず、メンバーにアバターを用意し、シンボリックなスキルやディテールの細かいストーリー性を持たせることで、キャラクターに付加価値をもたらし、ゲームやコミックで活かしやすくなります。
SMは従来のアイドル像である、曲をリリースして、歌番組でパフォーマンスを披露して、コンサートでファンにサービスするという形式にとどまらず、メタバースでのアバターによる活動、ゲームやウェブトゥーン(WEBコミック)など、さまざまな媒体でのメディアミックスを計画しています。
そして、IP(知的財産)の芸術的価値を高めるため、音楽レーベル、映画、TV、広告、ゲームなどに至るまで多様な形の独自のIPが互いにつながり、拡張された「SMCU型メタバースコンテンツIP」として著作物使用促進のための積極的営業業務に注力することで、パブリッシング部門のネットワーク経済力を強化させる好循環構造を作り出し、IPをあらたな収益源とする「SM3.0」のフェーズに入ったと発表しました。
これはSMだけの話ではなく、ほかの大手事務所もこういった流れに乗っています。
JYPに所属するTWICEは「Roblox」とコラボ、同事務所のITZYは「Pokémon
UNITE」など複数のポケモン作品とタイアップします。
YGに所属するBLACKPINKは「PUBG
MOBILE」とコラボし、ゲーム内でメンバーのアバターによるコンサートが開催されました。
これは単にムービーが流れるというわけではなく、コンサート会場へプレイヤーが開催時刻に入場し、会場内を自由に移動でき、好きな場所からパフォーマンスを鑑賞できるといったイベントです。
BLACKPINKのアバターが妙に大きいせいか、ちょっとシュールな絵になっています
これらは芸能事務所に所属する実在のアイドルがゲームとコラボするケースですが、その逆パターンもあります。
韓国三大ゲーム企業「3N」に含まれる「Netmarble」と韓国の大手インターネットサービス企業の「カカオ」が共同で、非実在K-POPグループ「MAVE:」を韓国の芸能界でデビューさせました。
MAVE:は実在するアイドルと同様に扱われ、実際の音楽番組でリアルK-POPアイドルと共演するなど、しっかりと芸能活動をしています。
K-POPアイドルが必ずといっていいほどアップしているChoreography(振り付け)動画もちゃんとあります。
MAVE:は日本でいうところの初音ミク、ホロライブ、キズナアイみたいな感じですかね。
日本のバーチャルタレントはアニメ調の見た目が多いですが、韓国は非常に写実的なフォトリアルが多いです。
(アニメ調のグループもカカオからデビューしています。めちゃくちゃかわいいです)
中には実写と見間違えるほどリアルなグループもあります。
もちろんMAVE:もゲームとコラボしています。
Netmarbleの「PARAGON: The Overprime」というゲームです。
というかNetmarbleが作ったアイドルグループを自社のゲームに登場させるのをコラボと呼べるのかはわかりませんが…。
韓国は「IMD世界デジタル競争力ランキング」で6位のIT強国です。
そして、K-POPはアジア圏だけではなく欧米でも人気が高く、米ビルボードメインチャートのTOPにのぼるほどです。(つまりアメリカでテイラー・スウィフトやオリヴィア・ロドリゴと同じ土俵で競いあってるんです!)
映画やドラマコンテンツも世界規模でブームを巻き起こしました。(パラサイト、愛の不時着、イカゲームは日本でも有名ですよね)
日本のアニメ、コミック、コンシューマーゲームが世界に誇るコンテンツなように、韓国エンタメ×ITも世界に誇るコンテンツなわけです。
そんな韓国が世界に誇るK-POPですが、日本では到底考えられない独自の文化によって支えられながら成長しています。
そのひとつに『ファンダム文化』があります。
ファンダム(fandom)とは、ファンに「領地、集団、勢力」などを表す接尾語「ダム」を合わせた言葉です。
一般的なファンとの一番の違いは、組織化されていて連帯感があり団結力が高いところでしょうか。
そして特徴的なのが、ファンダムにはそれぞれ公式のファンダム名があります。
BTS:ARMY
TWICE:ONCE
Redvelvet:ReVeluv
BLACKPINK:BLINK
日本で個々のファンに呼びかける場合は「ファンのみなさん」となりますが、K-POPではファンダム名で呼びかけるので、より親密さや一体感が高まります。
そのファンダムは個のファンではなく集団なので、大きな力を持っています。
たとえば、アイドルの人気投票などがあれば、一番の支持母体であるファンダムの組織票が動きます。この力を「火力」と表現します。
投票、動画再生、音源再生、音盤購入、それぞれにファンダムの火力が直結します。
このことから、しばしば「ファンダムの火力=グループの強さ」と見られることもあります。
ファンダムはあまりにもそういった力を持ちすぎることもあり、事務所への発言力も大きいです。
それを象徴付けるのが「ポストイット爆撃」です。
ファンダムは事務所に抗議することがしばしばありますが、その方法として事務所の建物に抗議文を記入した付箋を大量に貼り付けるのです。
「1日以上30日未満の拘留または1000円以上1万円未満の科料」の刑罰が下ります。
ですが、ファンダムに対して強気に出られないのが韓国芸能事務所の実情なのです。
ポストイットはまだマシなほうで、経営にダイレクトにダメージを受けるのが「不買運動」です。
例えばこれは「新曲を出さずにグッズで利益を得ようとする事務所」に対する抗議です。
新曲を出すにも費用がかかるので、その資金をグッズ収入で得ようとするのは間違っていないと私はおもうんですが、BLACKPINKは他の第三世代グループと比べるとカムバ(新曲リリース)の頻度がかなり低いので、焦らされたBLINKはこういった行動に走ってしまうのだとおもいます。
ファンダムは応援するメンバーの広告を自費でニューヨークのタイムズスクエアに出したり、コンテンツの翻訳やプロモーションなど、本来は事務所が行う業務をボランティアで担っており、事務所もそれに依存している部分が多いので頭が上がらないのです。
このように、本当の意味でファンダムがグループを育てているのです。
その一方で、多大な影響力と権力を持ってしまったファンダムの暴走も深刻な問題となっています。
ときに、手に負えないモンスターペアレントのような存在になるファンダムですが、芸能事務所だけではなく政治家さえも顔色を伺うほどの存在となり、その影響力は経済のみならず政治さえも動かしてしまうほどです。
経済と政治を動かすということは社会に与える影響が大きいということです。
それは韓国内にとどまらず、海外の政治にも影響を与えかねないほど膨れ上がっています。
ファンダムは韓国エンタメ界を世界的に飛躍させる原動力となる一方で、怒らせたら手に負えない諸刃の剣ですが、上手くコントロールできれば多大なビジネスチャンスを生むわけです。
これまで、ファンダムの自主性に委ねてきた韓国芸能事務所ですが、SMエンターテイメントは新たに「プロシューマー戦略」を掲げました。
プロシューマーとは、プロダクト(製品)とコンシューマー(消費者)を合わせた造語です。
「コンテンツ制作にファンダムを自主的に参加させる」というのが従来の形でしたが、プロシューマー戦略では「コンテンツ制作をファンダムと共同し、ファンダムに利益の一部を還元する」といった、より具体的な協力関係を築く内容となっています。
独特のK-POP文化としてファンダムについてお話しましたが、K-POPを語る上で欠かすことのできない文化がもうひとつあります。
それは『チッケム文化』です。
チッケムとは「fancam」のことで、コンサートに訪れたファンが自身のカメラでお気に入りのアイドルを撮影し、動画サイトやSNSにアップロードします。
ん?「それ、違法です。」っておもいますよね。
日本だと、著作権の侵害で10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方を科せられることもあります。
しかし、韓国やアメリカではコンサートの撮影が許可されている場合が多いです。
なんなら韓国では歓迎すらされています。
(RedVelvetの後輩aespaはまだ慣れていない様子で遠慮がち)
(RedVelvetの後輩aespaはまだ慣れていない様子で遠慮がち)
わざわざシューティングタイム (撮り代)用の曲まで用意したりします。
(TWICEより先輩のベテランOh my girlは手慣れています)
観客のカメラを受け取ってセルフィーを撮るのもよく見る光景です。
なぜK-POPアイドルや事務所がこんなにもチッケムを歓迎するかというと、尋常じゃないほどの宣伝効果が見込めるからです。
なので人気グループはコンサートチケットが秒で完売したりします。
ちなみに。このハートにはたくさんの種類があり、「今月の少女(LOONA)」の元メンバー「チュウ」が考案した「チュウハート」や、「宇宙少女(WJSN)」の元メンバー「ルダ」が考案した「ルダハート」は日本でもかなり流行りました。
かつて、EXIDという解散寸前の崖っぷち無名グループが、チッケム拡散の影響で出す曲が次々と一位を獲得するようなトップグループにまで上り詰めた、という事例もあります。
EXIDをブレイクさせた伝説のチッケム
ファンダム文化もチッケム文化も日本では(法的にも風土的にも)到底考えられないですけど、ファンの自主的な二次創作に絶大なプロモーション効果があるので韓国の芸能事務所は無視できないわけです。
事務所が一次コンテンツを供給 →
消費者は二次コンテンツに発展させる → 二次コンテンツがヒットすればアーティストのIP(知的財産)の価値もさらに高まる
→ 一次コンテンツがヒットしやすくなる → 二次コンテンツが増える
この好循環が生まれれば、事務所もファンダムもWin-Winなわけです。
すでに一部で、チッケムによって生計を立てるプロのチッケム職人も存在しますが、それまで自己満足の域で完結していた大半のファンダム活動までもが次世代のIPビジネスによって利益を生む経済活動に昇華するわけで、今後さらに活性化することが予測されます。
こういった動画によって、ファンがそれぞれ自分の推しの魅力を発信すれば新規ファンの獲得に繋がるので、事務所からすればありがたいわけです。
これは、インディーゲームにも応用できるとおもいます。
むしろ、資金力が乏しいインディーゲームこそこの仕組みを活かすべきだとおもいます。
たとえば、無名のインディーゲームがゲーム配信によってヒットすることがあります。
Minecraft、Among Us、Fall Guys、パルワールド、8番出口
これらもストリーマー(配信者)に人気の作品ですが、ストリーマーに見つかるには「面白いゲーム」であることが大前提です。
それに加え、いわば「配信映え」する要素があれば、より需要が高まるでしょう。
配信映えとは「見るからに楽しさが伝わるような盛り上がり要素」といったところでしょうか。
こちらの動画に登場する「PICO PARK」や「Party Animals」も大盛り上がりしていますよね。これはストリーマーの配信欲を煽るとおもいます。
また、PICO PARK公式サイトには
実況配信者のみなさまへPICO PARKの実況に関しては、営利/非営利問わずご自由にご利用ください。
と記載されており、配信ウェルカムな姿勢がうかがえます。
ほかには、ネットミーム化しやすい要素を取り入れ、二次コンテンツ化を促すといったところでしょうか。
いずれも、プレイ動画やスクリーンショットの加工、キャラクターのファンアートなどを歓迎する姿勢を示し、二次創作フレンドリーをアピールする必要があります。
「デベロッパーがゲームを公開し、プレイヤーが遊んで完結する」
ここからさらに、デベロッパーとプレイヤーが一緒にゲームを育てて盛り上げる「プロシューマー的アプローチ」はプロモーションの可能性を広げ、インディーゲームをヒットに繋げる活路となりえるのではないでしょうか。
(めちゃくちゃ長くなってすみません💦)
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