That's談<第五回目>インディーゲームの強みとは

2024年3月7日木曜日

That's談

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前々回、That's談<第三回目>の最後で

Downwellは直感的でシンプルな操作感でありながら、疾走感と爽快感があり、非常にすぐれたゲームです。

私はDownwellがインディーゲームならではの強みをふんだんに活かしていると感じました。

と書きました。

今回は、この「インディーゲームならではの強み」とはなんでしょう、というお話です。
大手にはないインディーゲームの強みはいくつか挙げられるとおもいます。

  • 個人、あるいは少人数ならではのフットワークの軽さ
  • プレイヤーからリッチなグラフィックや、大容量なボリュームを要求されない
  • 大手が冒険できない攻めたアイデアで勝負しやすい

一つめは、そのまんまです。
個人だとすべて自分の判断、自分のタイミングで決定できるという点です。
少人数の場合でも大所帯に比べるとかなり融通が効くとおもいます。

二つめは、大手のような美麗なグラフィック、長時間遊べるようなボリュームをあまり求められないという強みです。
多くのプレイヤーは、インディーゲームに求めるのはそこではない、と思っているはずです。
ファストフード店で料亭の味を求めないように、インディーゲームには「手頃な割におもしろい」を求めていることでしょう。
ボリュームが増えれば増えるほど開発期間も伸びますので、インディーゲームは大容量じゃなくても納得してもらえやすいという利点があります。

ただ、インディーゲームでも圧倒的ボリュームのゲームがありますし、超美麗3Dグラフィックの作品もあります。
それはもうただただスゴイなーとしかいいようがありません。
それは簡単に真似できるものではありません。

美麗な3Dのグラフィックを相当数用意するには少人数だとしんどいですし、外注するにはコストがかかります。
それに、インディーゲームで美麗な3Dグラフィックや大容量なボリュームを売りにしたとして、大手と同じ土俵に立っても敵わないのはプレイヤーも理解しています。

ただ、インディーゲームは大手ほどのクオリティを要求されない代わりに、大胆さは大手以上に求められる場合があります。

三つめは、これこそが最大の強みです。
大手の場合、大人数の従業員を雇い、設備の整った社屋があり、大人数が接続できるサーバを管理したり、商品をアピールするための広告を出すなど、経営を維持するためのランニングコストがかかります。
なので、ゲームが売れないと赤字になります。

ゲームが売れないと赤字になるのは個人でも同じですが、その規模がぜんぜん違いますので、インディーゲームは大手が手を出せないギャンブルで勝負しやすいです。
王道のストレート球で大手と勝負しても、剛腕を振るう名投手に球速では敵いません。
なのでインディーゲームは一歩間違えば暴投になるくらいの変化球で勝負したほうが勝ち目があります。
インディーゲームの支持層も、そういったユニークな作品を求めている人は少なくありません。

また、極端なほどシンプルなゲームで勝負できるのもインディーならではです。
大手ならプレイヤーキャラを敏腕クリエイターがデザインして、凄腕の技術者が3Dのモーション制作をこだわり抜いて、豪華な声優がボイスを吹き込んで、プレイヤーに「さすがだ」と言わせます。
その点、インディーゲームの場合はプレイヤーキャラクターが丸と線だけの棒人間や、真っ黒のシルエットでも許されます。
【中国ゲーム市場】中小デベロッパーの逆襲!?運営会社ランキングTop7『Pandada』成功の秘訣は? | 中国ゲーム 日本語情報サイト[ゲーム大陸]

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スマホゲームの分析を行う『App Annie』が中国のトップパブリッシャーを発表した。同ランキングでは『テンセント(Tencent)』や『NetEase』など大手が名を連ねる中、40名規模の中小デベロッパー『Pandada(小白)』がTop7の座に輝いた。競争の激しい中国市場で如何にして成功を果たしたのか。その背景を紹介したい。

大手が豪華に盛り付けたくなるようなゲームを、インディースは必要最低限のパッケージで売り出すことができます。

ただ、シンプルというのはセンスを問われます。
シンプルがゆえ、洗練されていないと単にチープな印象を与えて終わりかねません。

冒頭で挙げたDownwellは、見事にこれらをクリアしているといえるでしょう。
  • シンプルなビジュアルでありながら非常に味があって、ダークさが地下の雰囲気にマッチしていて妙にかっこいいです。

  • 「敵を撃破しながら一方向に進む」という一見するとよくあるゲームですが「井戸に飛び込み先の見えない地下にどんどん落下していく」というアイデアは非常にユニークです。

  • 落ちながら敵を撃破する爽快感と、すこしの判断ミスがゲームオーバーに繋がる緊張感のバランスが絶妙です。

  • 短い時間に気軽にプレイできるカジュアルさと、武器の選択で戦略性が広がる奥深さは秀逸です。

  • プレイヤーの練度が上がれば記録も伸びるので、PS(プレイヤースキル)の成長を実感できる楽しさは飽きさせにくいです。
これはやはり、開発者であるもっぴん氏のセンスのなせる技です。





センスといえば、薄羽涼彌氏の『ゾウ だけが解けるパスワード』も非凡さを感じます。
『ゾウだけが解けるパスワード』は、NHKが主催するコンテスト『神ゲー創造主エボリューション2023』でグランプリを受賞した作品です。

百聞は一見に如かずですよね。
『ゾウだけが解けるパスワード』は無料でブラウザゲームとして公開されていますので、そのセンスを実際に感じてみてください(スマホでのプレイを推奨します)
薄羽涼彌 | Ryoya Usuha - elepass

薄羽涼彌 | Ryoya Usuha - elepass

Version 0.8 (2023/12/23)

過剰包装されていないシンプルなパッケージ、思い切りがよく引き算の美学を感じるビジュアル、直感的でとっつきやすいゲーム性、おもわず唸る独創性、尖ったアイデアなのに突き放さない温かみのある雰囲気。
どうでしょう。センスを感じたとおもいます。



 スタイリッシュな方向へセンスがあふれる作品も素晴らしいですが、ユーモアのセンスに富んだ作品もまた素晴らしいです。
先日、小学生の娘がげらげらと笑いながらプレイしているゲームがありました。


『WHAT THE CAR?』というゲームで、一見するとシンプルなカーレースゲーム風(実際はランゲーム)なんですが、ステージが進むと操作する車がどんどんヘンテコになっていくんです。
「こんな車はいやだ!」というお題の大喜利を見ているようで、大人も楽しめます。

ユーモアあふれるだけではなく、ヘンテコに変化した車によって操縦方法が変わるので、ゴールにたどり着くには特性を見極めることが必要ですし、クセのある操作性のコツを掴む必要もあります。
そこがゲーム性としても優れていて「これは確かにおもしろい!」と感心しました。

なにより、子どもをここまで楽しませて笑わせるゲームってとても素晴らしいなって感じました。
いたるところにいるクマのキャラクターもめちゃくちゃキュートです🧸
WHAT THE CAR? — WHAT THE GAMES?

WHAT THE CAR? — WHAT THE GAMES?

An absurdly silly adventure full of racing, laughs, and surprises. Roll, jump, fly and sneeze your way to victory!

こういったゲームに出会えるのもインディースの良さです。
大手のゲームは大手の良さがあります。
映画だってハリウッド作品の良さもあれば、B級映画の良さもあります。
グルメだって高級レストランの良さもあれば、ファストフードの良さもあります。
KPOPも大手事務所のトップグループの良さもあれば、中小事務所のマイナーグループにも良さがあります。

大手には「面白くて当たり前」という期待値の高さがあります。
そして、大手は期待に応えるべく一定水準以上の作品を提供できる力を持っています。
間違いない安定感を求めるなら大手です。

一方でインディーゲームには「海底に沈むお宝探し」の楽しさがあります。
正直、インディーゲームは玉石混交でハズレも多いです。
その中にお宝といえるような作品があっても、大々的に宣伝するための広告費が足りないことがおおく探すのに一苦労します。
そんな中で面白い作品に出会えたときの喜びはひとしおです。

「苦労して見つけた」という気持ちは愛着に変わります。
苦労して見つけた作品は応援したくなりますし育てたくなります。
マニアックな作品にコアなファンが多いのはそういった心理だとおもいます。

なので、マニアの琴線に触れるような一味違う作品を作れるか否かが鍵だとおもいます。
しかし、ただ単にニッチな作品やピーキーな作品にすればいいというわけでもないとおもいます。
あまりにもとっつきにくいと単なるキワモノで終わりかねません。
奇をてらいすぎてスベってしまうということもあるでしょう。
キャッチーさとユニークさのバランスは大事だとおもいます。



ここまでを読むと「センスがなければゲームは作れないの?」っておもわれるかもしれません。
センスはあるに越したことはないとおもいます。
センスをある程度は磨くこともできます。
ざんねんながら、それでもセンスが乏しい場合もあります。

少なくとも私は、上記でご紹介したようなゲームを作るためのセンスは持っていません。
しかし、高いセンスというのは強力な武器であっても、数ある武器のひとつに過ぎないとおもいます。

センス以外の武器にひとつに「情熱」があるとおもいます。
ひとり、あるいは少人数で10年くらいの歳月をかけてこつこつ開発されたインディーゲームが多くあります。
開発期間計15年近く、制作者の心血注いだ大作2DARPGのリメイク版がついにスイッチにも!『ASTLIBRA Revision』ニンテンドースイッチ版配信開始 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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時と運命に翻弄される青年の物語が描かれます。

【RPGタイム!】10年以上も手描きした開発期間を振り返る24ページ大特集! ファミ通20年ぶりの禁断の袋とじ情報+FFの父・坂口博信氏や恩師の応援コメントも!【先出し週刊ファミ通】 | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com

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2022年9月1日号(8月18日発売)の週刊ファミ通では、背表紙から始まる『RPGタイム!』の特別な大特集を掲載。ノートに手描き、手作り工作を用いて構想15年、開発期間9年もの歳月を費やして作られ、世界中でゲームアワードに輝いた本作の開発過程に込められた想いをお伝えします。

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映画のような雰囲気とホラー要素を兼ね備えた、過酷な近未来宇宙のサバイバル。

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国内インディーゲーム開発者の間で、作品の「開発期間見積もり」についての話題が盛り上がったようだ。複数の開発者が、自身の経験を踏まえて語っている。 

今から10年後、ゲームの流行り、ニーズ、主流がどうなっているかもわからないですよね。
また、10年もあれば、開発の途中で自身のアイデアにそっくりなゲームが先にリリースされることも絶対にないとはいいきれません。
それでも信じて最後までやり遂げるには、相当量の情熱が必要だとおもいます。

ゲームは、どんな作品がヒットするかなんてそう簡単にわからないですよね。
少なくとも私にはなにがヒットするかなんて予想できません。
ヒットするように工夫したり試行錯誤したり、できる限りのことはやって最善を尽くしますが、それで必ず当たるとは断言できません。

私は人並み外れたセンスも持っていませんし、有名クリエイターのような天才的頭脳も持っていませんし、天賦の才もありません。
情熱はそれなりにありますが、一つの作品に15年も費やせるかどうかは自信がありません。

私が心から尊敬してやまない桜井政博さんなんて『東大生137人が選ぶ令和の天才ランキング』に選抜されていましたからね。
(きっと凡人の私とは見えている世界が違うとおもいます😖 でも、凡人の私にもわかりやすいお話でいつも励まされ救われています。)

ゲームがヒットするかわからないなら、ヒットするかどうかは二の次にして自分が好きかどうかを突き詰めたとき、その先に案外と成功があるのかもしれません。

それは「大衆受けしなくてもいいのでマニアックな趣味を持つ同志を唸らせたい」とか「ほかの誰でもなく自分自身が求める究極系を作りたい」とか「絶対に譲れないこだわりを突き詰めたい」とか「自分の作品で子どもに笑顔になってもらいたい」というのも「好き」の形に含まれるとおもいます。

自分の「好き」に誰かが共感してくれる、そんなときが訪れるのを待ちながらゲーム作りをたのしむ。
私は、それもインディーゲームを作る上ではひとつ武器だとおもったりします。

そもそも、ヒットすることだけがゲーム作りの目的でもありませんしね。
純粋に「誰かに喜んでもらいたい」という目的だって素敵じゃないですか。

桜井氏も仰っていますが、なにせアイデアを形にして世に発表することがいちばん大事です。

桜井氏「なにも作らないよりは 作ったほうがエライのです!!」

こちらの記事でもお話しましたが。
たとえ、それが既存のゲームの模倣でも構わないのです。
自身のオリジナリティをプラスしたりブラッシュアップして独自の発展を遂げればいいのです。

皆さんの描いたアイデアを形にできるよう、私はこれからもささやかながらお手伝いさせていただければ幸いです。

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