これまで、ゲーム業界ではさまざまな権利侵害に関する訴訟が起きてきました。
キャラクター、グラフィックデザイン、UIなどビジュアルに関する訴訟のほかに、ゲームシステム、操作方法など技術的な部分に関する訴訟などがあります。
本題に入る前に実例を元にいくつかご紹介します。
物語のベースはシリアスで重いですが、パロディ要素がはいることですこし柔らかくなり、シリアスシーンとのコントラストをより一層際立たせています。
ビジュアル面における訴訟といえば、過去に「League of Legends」を開発運営する
Riot Gamesの親会社であるテンセントが、「Mobile
Legends」を運営するMoontonを相手に著作権等の権利を侵害したとして訴訟を起こしました。
この訴訟でテンセントは勝訴し、Moontonに290万ドルの賠償命令が下されました。
「Mobile
Legends」はタイトルロゴ、キャラクター、ムービーの構成などビジュアル面が非常に「League
of Legends」と酷似していますので当然の結果といえます。
「League of
Legends」の競技人口は1億人を超え、実際のスポーツの競技人口と比べても、バスケット、サッカーに次ぐほどに多く、e-Sportの代名詞ともいえるタイトルです。
「世界一プレイヤーの多いゲーム」として今も多くの国で支持されています。
余談ですが、テンセントは中国版GAFAと呼ばれる「BATH」に含まる大手IT企業です。
(ちなみにGAFAは米国のIT大手4企業を指します)
Moontonの親企業であるByteDanceもTikTokを運営する大企業です。
この後も、逆にByteDanceがテンセントを別件で訴え返したりで泥沼化が続いています。
この後も、逆にByteDanceがテンセントを別件で訴え返したりで泥沼化が続いています。
技術面に関しては、過去に任天堂がコロプラ社を相手に特許権の侵害訴訟を起こしています。
コロプラの「白猫プロジェクト」で、プレイヤーを操作する「ぷにコン」が任天堂の所有する特許を侵害しているという主張です。
この件に関して、当時の私はスマホゲームのバーチャルパッドに特許があるとはおもっておらず、とても驚き、自身の認識の甘さを改めました。
「ゲーム制作会社が同業者を訴える」というケースだけではありません。
個人のインディーゲーム開発者が大手家具チェーン店から警告されるというケースもありました。
このように、ゲーム業界でも権利侵害によって訴訟沙汰になることは珍しくありません。
情報学系をメインとした理系の大学にも唯一の文系学部として、知的財産学部が用意されていたりと、ITの分野でも知的財産権は重要視されています。
しかし、似たようなゲームって世の中に溢れかえっていますよね。
なにがパクリでどれがパクリじゃないのか、その線引きは一筋縄ではいきません。
別の記事でもすこし触れましたが、かつてアーチャー伝説のインスパイアゲームが大量にリリースされました。
その後、ヴァンパイアサバイバーズのインスパイアゲームも大量にリリースされました。
おもしろいことに、アーチャー伝説の開発元であるHabbyもヴァンパイアサバイバーズのインスパイアゲームをリリースしています。
最近では、スイカゲームのインスパイアゲーム、というよりほぼクローンゲームが大量にリリースされ、現在進行形で「8番出口」のクローンゲームも増えつつあるようです。
このように、インディーズ界隈でも人気作が登場するやいなや模倣が横行しているわけですが、ここで「インスパイアゲームってなに?」と気になった方もいらっしゃるとおもいます。
「インスパイア」とは「感化」や「ひらめき」という意味です。
つまり、既存のゲームから着想を得て作られたゲームは「インスパイアゲーム」あるいは「フォロワーゲーム」ということになります。
その昔、ゲームは画面がスクロールしない固定画面のものがほとんどでしたが、スーパーマリオの登場によって革命が起こりました。
その後、スーパーマリオにインスパイアされ、画面が横にスクロールするゲームがつぎつぎと生まれました。
ストリートファイターⅡが一世を風靡したときも格闘ゲームが次々とリリースされましたし、テトリスがブームになったときも多くの落ち物パズルゲームがリリースされました。
このように、革命をもたらしたゲームにインスパイアされて生まれたゲームは非常に多く、とくに珍しいものでもありません。
「ヘッドオン」からドットイートが生まれ、「怒首領蜂」から弾幕系STGが生まれ、その後サブジャンルとして定着しました。
また、メトロイドヴァニア(メトロイド+キャッスルヴァニア)やローグライク(ローグに似た)、ソウルライク(ソウルシリーズに似た)といったように、特定のタイトルを用いたサブジャンルが生まれることもあります。
冒頭でご紹介した「League of Legends」も、Warcraft
IIIのカスタムマップを元にアマチュアクリエーターによって作られたMODである「DotA」をベースにした「Multiplayer
Online Battle Arena(MOBA)」というジャンルのゲームです。
連綿と続くデジタルゲームの歴史は、1958年に史上初のビデオゲームとして誕生した「PON」から始まり、昨今のゲームへと繋がっているのです。
インスパイアゲームやフォロワーゲーム自体は別に悪ではありません。
どうしてもオリジナルと比較されがちなので、オリジナルにはない独自性を持たさなければ「二番煎じ」や「劣化コピー」と評されやすいですが、名作が生まれることもあります。
ただ、前述したスイカゲームや8番出口のクローンゲームに関しては、インスパイアゲームやフォロワーゲームとは到底呼べない悪質なコピー商品だとおもいます。
あたかもオリジナル(あるいは関連するゲーム)かのように装っており、正規品と区別が難しいほど紛らわしく、明らかにプレイヤーを欺く意図が感じられるので悪質です。
インスパイアと似たものとして「オマージュ」や「パロディ」があります。
オマージュは「敬意」や「尊敬」という意味であり、「オマージュを込める」とは、既存の作品に敬意を払い(あるいは愛をもって)独自のアレンジ加え、自身の作品に取り入れることです。
パロディは「もじる」というニュアンスです。
オマージュとは違い、既存の作品をおもしろおかしく、時には皮肉的に引用することです。
パロディを用いるのは、オリジナルのファンを喜ばせる意図であったり、風刺を目的とします。
パロディもあらゆるジャンルの作品で見かけます。
例えば、TWICEの「What is
Love?」は私も大好きな曲ですが、MVに映画のパロディがてんこ盛りで、「愛ってなに?」という歌詞の内容と映画のロマンスシーンがマッチしていて極上のエンタメに仕上がっています。
超人気コミックの「ゴールデンカムイ」にも数々のオマージュやパロディが登場します。
物語のベースはシリアスで重いですが、パロディ要素がはいることですこし柔らかくなり、シリアスシーンとのコントラストをより一層際立たせています。
風刺的なパロディとしては、チャーリー・チャップリンの喜劇などが挙げられます。
このように、あらゆる創作物や表現でパロディは取り入れられていますが、ゲームでも多く見かけます。
CAPCOMのストリートファイターシリーズに登場する波動拳、昇竜拳、瞬獄殺といった技はとても象徴的ですよね。
そのパロディはいろんなゲームで見かけます。
そのパロディはいろんなゲームで見かけます。
ほかにもジョジョの奇妙な冒険に登場するスタープラチナのパンチラッシュも枚挙に暇がないほどパロディをさまざまなゲームで見かけます。
熱狂的ファンが多い作品はそれだけ引用されやすいのです。
オリジナルを知ってる人にとって、パロディとはたのしい要素となる場合が多いです。
私も自身の作品にいくつかパロディを取り入れています。
その理由は作品への愛とリスペクトがあって、ネタ元のファンに喜んでもらいたい気持ちや、その作品を好きな気持ちを共有したいというおもいがあるからです。
インスパイア、オマージュ、パロディ。それらには大原則があります。
・すでに周知されているものを引用していることが明らかであること。
・オリジナルを装ってユーザーを欺くような意図がないこと。
・オリジナルのファンに不快感を与えないこと。
・権利者の権利を侵害しないこと。
これらは必ず守る必要があります。
この記事を書くきっかけになった現在進行形の騒動があります。
それは「パルワールド問題」です。
(詳細につきまして本記事では割愛しますので、よろしければ下記リンクを御覧ください)
現状では、パルワールドがポケモンの権利を侵害しているという結論には至っていません。
ポケモン側も「調査中」とのことで権利侵害については明言していません。
敵キャラを味方にする育成ゲームといえば、メジャーなものなら女神転生シリーズやドラクエモンスターズシリーズ、デジタルモンスターなどがあります。
ほかにはスマホ向けゲームでエバーテイルやドラゴンエッグなどもあります。
ポケットモンスターとは、ポケモンをモンスターボールを使って捕獲したのちに仲間にして、野生のモンスターと戦わせたり、ジムリーダーとポケモンバトルで競うゲームです。
ほかにはスマホ向けゲームでエバーテイルやドラゴンエッグなどもあります。
単に「ポケモンに類似したゲーム」であれば、そこまで問題視はされなかったでしょう。
ただ、私個人はパルワールドが権利侵害していなかったとしても、あまり良い印象を持てません。
問題は、ポケモンに似たキャラクターを「殺せる」「食料にできる」「労働力として酷使できる」といった部分だと思います。
ポケモンを彷彿とさせる愛くるしいキャラクターが粗末で残酷に扱われるわけです。
これではオリジナルのファンが不快感を示すのも無理はないでしょう。
しかし、パルワールドがかなりヒットしているのも事実です。
ということは、それだけニーズがあるということだと言えます。
パルワールドのジャンルとしては、クラフトがメインのサンドボックスゲームであり、パル(ポケモン似のモンスター)によるバトルはあくまでサブ要素です。
サンドボックスゲームとは、ストーリー進行や世界を救うといった目的があるわけではなく、主にオープンワールドで木材や鉱石などの資材を集め、家具や工具などをクラフトしたり、建造物を建てて自分好みの箱庭を作るゲームです。
代表的なサンドボックスゲームといえば「マインクラフト」や「テラリア」、国産なら「どうぶつの森」や「ドラゴンクエストビルダーズ」などがあります。
パルワールドがオリジナリティを発揮しているのは、サンドボックス×モンスターバトルの部分でしょう。
ですので、そもそもRPGであるポケモンとはジャンルが違うわけです。
パルワールドはゲームとしておもしろいのだとおもいます。
ただ、わざわざポケモンに酷似したキャラクターを登場させる必要があったのかは甚だ疑問です。
話題性があったのは確実ですが、同時に大勢のアンチも生み出したこととなり、手放しにマーケティングが成功したとは言い難い状況でしょう。
そして、あろうことかこの騒ぎに便乗する不届き者も現れだしました。
これらは明らかに悪質で、アプリの中身も得体が知れないので要注意です。
インスパイアもオマージュもパロディも、自身の作品に一部を引用するのは構わないとおもいますが、その際は原作者へ最大限の敬意を示すと同時に、原作ファンの気持ちを蔑ろにしないことをデベロッパーとして肝に銘じたいですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
0 件のコメント:
コメントを投稿